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問題 10-100
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価値尺度
概要
- 商品貨幣が果たす三つの機能のうち、価値尺度の機能について学ぶ。
- 価値の表現に対して、価値の大きさを「はかる」ための追加条件を理解すること。
貨幣(商品貨幣)と商品が実在する市場
売るということ
問題 10-1
100円硬貨があれば、100円という価格がつけられた商品は何でも、すぐに買える。
しかし、100円で買った商品を100円で売ろうとしても、すぐには売れない。
すぐに売ろうと思えば、90円とか、80円とか、価格を下げなければならない。
ということは、商品の100円は、貨幣の100円より価値が小さいのだ。
さて、以上の推論は妥当か。理由を述べよ。
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25/77 ...1点以上 32%
解答と解説 10-1解答
- 妥当ではない。
- 「すぐに」売れる価格が、商品の価値を表している、という想定が誤った推論を生んでいる。
- 価値は商品種の属性であり、同種商品のなかで、価値を表す価格で売るには、確率的な変動を伴うある期間を要する。他の同種商品を押しのけて「すぐに」売れる価格が、商品価値を表していると考えている点で、この推論は妥当ではない。
解説
「すぐに」売れる価格が、商品の価値を表している、と考えてしまうのは、この講義で明らかにしてきた「商品と貨幣が実在する市場」の意味がまだよく理解できていないからです。
「商品と貨幣が実在する市場」では、同種商品が大量に存在するなかで、その価値を表現する貨幣が持続的に存在するのです。
同種大量の個々の商品は、どれかはきまっていませんが、100円で次々に売られてゆくわけで、たしかに種としては100円の価値があるのです。
すぐには売れないけれども、100円の価格をつけて、売れるのを待っている商品を、ここでは在庫用語上の注意!「在庫」という用語は売るつもりがないストックという意味で、商品と区別して使われることがあります。しかし、この講義の商品の定義にしたがえば、このような区別は無意味です。ここでは、商品はあまねく在庫である,という意味で、商品として存在する対象すべてを「在庫」とよびます。とよびます。
こうした在庫が存在するから、表示された価格でなら、貨幣は何でもすぐに買えるのです。だから、逆に、すぐに必要がないかぎり、貨幣の状態で持ち続けられるので、市場には、一定量の貨幣が実在するのです。
需要と供給が一致するように価格がきまるという「均衡」という考え方は、このような「商品と貨幣が実在する市場」のすがたをみえなくさせます。ある価格ですべての商品の需要と供給が一致している、とすれば、すべての商品が、その価格で、すぐに全部売れるはず。だから、市場には、ここで定義した「在庫」など存在しない。したがって、貨幣も価格をつけるに使われたかもしれないが、取引がおこなわれたあとには存在しない。つまり、市場は均衡価格でカラっぽになる、というのが、均衡論的な市場の捉え方です。
この講義で明らかにしてきた「商品と貨幣が実在する市場」像は、需給均衡論による市場像と正反対のものです。二つをごた混ぜにしてはいけません。
価値を「はかる」と言うこと
▶価値尺度の定義
▼価値尺度の定義
- 商品の価値は価格で「表現」される。この表現はつねに変更可能な状態にある。
- 貨幣による購買は、この価格表現を在る値に確定する。
- 価格を確定させる貨幣の作用を価値尺度とよぶ。
- 商品の価値は、表現されただけではまだ「はかられた」とはいえない。
- 「表現」された価格は、売買によって「実現」される(価格の実現)。
- この意味で、価値尺度機能とは、商品の価値を「はかる」機能である。
- 商品のもつ、潜在的な全面的同等性として価値が、目に見える貨幣額として現れることをもって、「価格の実現」を「価値の実現」ということもある。
問題 10-2
売買とは商品と貨幣の交換だ。
この言説で見失われる、売買の特徴を一つ語句で示し、その含意を説明せよ。
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24/75 ...1点以上 32%
解答と解説 10-2解答
- 不可逆性
- 交換はその語義からして可逆であるが、売買では、買った価格で必ず売れるとはかぎならい。
解説
- <売りと買いの「分離」>とか<表現と実現の「分離」>という解答もあるかもしれない。しかし、分離された二項の関係を明確にしている点で、不可逆性のほうが踏むこんでいる。
- 時間の流れのなかで、個々の商品はバラバラに売られてゆく。この時間に沿って、価格表現は変化するが、実現れた価格は、時間軸にそってならぶ。一度実現された価格をもとに戻すことはできない。