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蓄蔵貨幣
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問題 10-20
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第10講のネライ
- 売ると買うの間には、時間的なズレがある。
- 売るためにはランダムな期間がかかる。
- 取引量と貨幣量:物価指数:flow と stock
蓄蔵手段
- 購買力を一定期間保持する貨幣の機能という蓄蔵手段という。(教科書では「保蔵」という用語が当てられているが、ここでは「蓄蔵」を「保蔵」と同じ意味で用いる。)
- これが、価値尺度、流通手段とならぶ貨幣の第三の機能である。
販売期間
- 市場の基本構造は「売ってから買う」という順序を基礎としている。
- 言い換えれば「相手が売れなければ、自分も売れず、したがって買えない」という制約をもっている。
- このため、多種大量の商品が流通する市場では、個々の商品は売るのにそれぞれランダムな期間を要する。販売に必要な期間を、商品の流通期間という。
- 需要と供給の均衡で、すべての財の交換比率がきまり、無時間で、その比率で交換がおこなわれるという市場像は、この講義で演繹してきた市場の基本構造と根本的に合致しない。この基本構造は貨幣が実在する市場に特有なものである。
フローとストック
- 空のタンクに水が毎秒4リットル流れ込み、毎秒3リットル流れ出す。1分後にタンクに溜まっている水の量は?もちろん...
- 流れ込んだ水の総量 $4 [l/sec] \times 60[sec] = 240[l]$, 流れ出した水の総量 $3 [l/sec] \times 60[sec ]= 180 [l]$ の差 $60[l]$ になる。
- しかし60秒後、240リットルの水、180リットルの水は存在するのか?存在するのは60リットルの水だけ。
- ある時点で止めた時、実在する量がストック、ある期間を通じて現れる量がフローである。
貨幣量と売買総額
- 貨幣は市場にとどまるストック、商品は流通し次々に市場からでてゆくフローを構成する。
- 貨幣ストックは一定期間変わらず、その量は$M$であったとする。
- この期間の商品フローの量はベクトル ${\bf T}=(t_1,t_2,\cdots,t_n)$ であった。また価格ベクトル ${\bf P}=(p_1,p_2,\cdots,p_n)$ は変わらなかったとする。
1分問題
問題 10-1 未公開
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1分問題
問題 10-2 未公開
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1分問題
問題 10-3 未公開
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8/67 ...1点以上 12%
1分問題
問題 10-4 未公開
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4/67 ...1点以上 6%
問題 10-5 未公開
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6/59 ...1点以上 10%
復習問題
1分問題
問題 10-6
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54/66 ...1点以上 82%
解答と解説 10-6 解答
${\bf P T} = Mv\hspace{5em} s.t.\hspace{1em} v>0$
解説
- 左辺はフローの値。$v$ はストック値 $M$ をフロー値にする係数。「貨幣の回転速度」とか「流通この「流通」はcirculationではなく、currency のほう。一度売買されれば市場からでてしまう商品の流通には「流通期間」は考えられても「流通速度」などという概念は成りたたない。速度」とか、よばれることもある。
- 一般には $v>1$ であり、${\bf P T}>M$ と考えられている。
- つまり、貨幣ストックはその何倍もの売買総額のフローをつくりだす、と考えられている。
- しかし、この「つくりだす」という捉え方は誤解のもと。
After
ベクトルの内積なので、通常$P\times T$ ではなく$PT$と表記すべきところ可としたが、$M/T$とか$M/P$はありえない。
1分問題
問題 10-7
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21/44 ...1点以上 48%
解答と解説 10-7 解答
貨幣ストックが売買総額を決定するという誤解を生むから
解説
- ${\bf P T}= Mv$ は、あくまでも、事後的な関係。上の説明文が「であった」という過去形ですべて書かれていたことにあらためて注意。
- これを、$Mv \to {\bf P T} $ という因果関係ととってはならない。
- さらに、$v,T$を一定のみなして、$M \to {\bf P } $ 。$ {\bf P } =f(M) $ と考えると、
- 貨幣量が価格水準を決定するという「貨幣数量説」になる。''貨幣の数量が価格水準を決定する''という古くからある学説である。これは「貨幣が増大すると物価が上昇する」という俗説のもとである。
- この主張には、${\bf P T}= Mv$ の左辺について、${\bf P}$ と${\bf T}$を分離する必要がある。たとえば、
- ${\bf T}$ は貨幣量$M$が変化しても変わらない。
- ${\bf P}$ はスカラー値の平均価格 $\bar{p}$ に均すことができる。$\bar{p}$ は、価格の絶対水準、あるいは物価水準に対応する。
- また $v$ は $M$ が変化しても変化しない。
- さらに貨幣の量は、外部から増減させることができる。
といった条件である。 - このとき次の式が成り立つ。 $$ (\bar{p}+\varDelta\bar{p}){\bf T} = (M+\varDelta M)v$$ つまり、物価水準は貨幣量に比例して騰落する。
1分問題
問題 10-8
価格ベクトル$ {\bf P} $と${\bf P'}$を比較して、物価が$10\%$上昇したといえるのは、どういうときか。
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解答と解説 10-8 解答
すべての価格がすべて$10\%$上昇したとき。
$p'_i = 1.1p_i$ for each $ i = 1,2, \ldots,n$
$P'$の方向が$P$と同じで長さが1.1倍になるとき
解説
- このときにはスカラー値 $\bar{p}$ によって ${\bf P'} = \bar{p}\, {\bf P}$ のように表せる。
- しかし、もともと物価 prices というのは、価格ベクトルのことである。
- 物価の変化は、$p'_i/p_i$ のバラバラの変化を伴うから、スカラー値である平均価格 $\bar{p}$ のようなもので、物価水準をはかるのには根本的な無理がある。
1分問題
問題 10-9
ある期間、貨幣量が$M$のままであり、その期間に一定の価格ベクトル ${\bf P}$ のもとで流通した商品の物量ベクトルが ${\bf T}$ であった。
ある期間、貨幣量が $M+\varDelta M$のままであり、その期間に一定の価格ベクトル${\bf P'}$のもとで流通した商品の物量ベクトルが ${\bf T'}$ であった。
二つの価格ベクトルを比較する式を示せ。
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3/65 ...1点以上 5%
解答と解説 10-9 解答
$\bf{P'T}/\bf{PT}$ あるいは $\bf{P'T'}/\bf{PT'}$
物量ベクトル$\bf{X}$を任意に定めて、$\bf{P'X}/\bf{PX}$
解説
- $\bf{P}$ と $\bf{P'}$ は、ベクトルの比較になる。ベクトルの要素となる個々の価格のなかには、上がるものも、下がるものも含まれている。
- だから共通の物量ベクトルとの内積をとり、スカラー値にして比較する必要がある。この比率に通常100をかけた値を物価指数という。物価の変化は、物価指数のかたちで表される。
- 価格の比較が求められるケースは物価だけではない。例えば上場されている株式は、時々刻々、その値が変化する。これは株価指数のかたちで表示される。例えば日経225という株価指数がある。このとき、ウエート付に使われている$\bf{X}$がどのような構成になっているか、調べてみよう。日経平均 ヒートマップ
- なお、指数 index というのは、ベクトルを一定の方式でスカラー値に対応させたものであり、気温と湿度からなるベクトルから不快指数を算出したり、体重と身長からBMI body math index を算出したりする。
- 指数の算出のもとになるデータは客観的に計測できる(($^\circ$C、%)や(cm,kg)単位をもつ)が、指数化する方式には同じ客観性はない。同じデータからでも、いろいろ異なる指数をつくることもできるのだ。データの客観性につられて、指数まで同じ客観性をもつかのように誤解してはならない。所詮指数は、客観的な事実に対する人間の主観的な評価に過ぎないのだ。
- だから、不快指数なども大勢の人に「不快」と感じるかどうか、アンケートをとり、100人中何人が不快と答えたか、で示す方式も可能である。実際、景気の状況を示す日銀短観なども、このアンケート方式で指数をつくっているのです。短観で使われている「D.I.」の話です。
- 指数は「客観的な事実に対する人間の主観的な評価」だという点は、アンケート調査方式によるのではない、物価指数にも同じように潜んでいます。
問題 10-10
価格が上昇する商品群を商品Aで、下がる方を商品Bで代表させ、2商品のケースで物価指数の変化を考えてみる。昨年と今年で、商品価格と流通量が次のように変化したとする。
$$昨年の価格ベクトル {\bf P_0} = (100,50)$$$$今年の価格ベクトル {\bf P_1} = (50,100)$$$$昨年の物量ベクトル {\bf T_0} = (50,100)$$$$今年の物量ベクトル {\bf T_1} = (100,50)$$
昨年と今年で、物価は上がったのか、下がったのか?理由を述べよ。
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24/64 ...1点以上 38%
解答と解説 10-10 解答
- 上がったとも、下がったともいえる。
- 昨年の物量ベクトルを基準にして価格ベクトルの変化を測れば $${\bf P_1 T_0} /{\bf P_0 T_0} = (50,100)(50,100)/(100,50)(50,100) = 12500/10000 = 1.25$$ となり、物価指数は昨年を100として今年は125に上昇。
- 今年の物量ベクトルを基準にして価格ベクトルの変化を測れば $${\bf P_1 T_1} /{\bf P_0 T_1} = (50,100)(100,50)/(100,50)(100,50) = 10000/12500 = 0.8$$ となり、物価指数は80に下落。
解説
- ${\bf P_0}$と${\bf T_1}$がなす角を$\theta$とすると $${\bf P_0 T_1} = |{\bf T_1|} \cdot |{\bf P_0}|cos\theta $$となることを思いだしてみよう。${\bf P_1}$ と ${\bf T_1}$ のなす角は、この場合ゼロだから、 $${\bf P_1 T_1} = |{\bf T_1} | \cdot | {\bf P_1}| $$ となる。
$cos \theta < 1$ だから、$ |{\bf P_0}| = |{\bf P_1}|$でも、$${\bf P_0 T_1} = |{\bf T_1} | \cdot |{\bf P_0}|cos\theta < |{\bf T_1}| \cdot |{\bf P_1}| = {\bf P_1 T_1}$$ となることが、図を書いてみれば すぐわかる。
また、${\bf T_0}$で${\bf P_0, P_1}$をスカラー化して比較すれば、大小関係が逆になるのもわかるだろう。 - この例では、${\bf P_0}$ と${\bf T_1}$、${\bf P_1}$ と${\bf T_0}$がそれぞれ等しくなっているが、これは特殊なケース。一般には、4つのベクトルは、それぞれ異なる。この関係も、図を書いてみれば、どうなるのか、すぐに見当がつくだろう。
- ベクトルで示されるデータは、だれがみても同じ、客観性をもつ。
- しかし、指数化のノルムをどう決めるかで、指数の変化は逆になるというケースもでるという話。これは極端なケースかもしれなが。もしすべての価格が多少とも上昇すれb、どういうノルムで指数化しても、逆転することはない。
- 実際に物価指数をつくるときには、基礎となる物量ベクトルも、価格ベクトルも、そもそも全数の計測が困難だ、という問題が付け加わる。
- 消費者物価指数であれば、実際に消費される物量ではなく、標準的な家族で消費する商品物量のセットでウェート付がなされている。
- また、価格も調査員が店頭に赴き決められた品目の表示価格を報告しているようで、実際にその価格で売れたかどうかをいちいち確認しているわけではない。実際には高すぎて一個も売れなくても、値札をみてくるだけなのだろう。実データの面でも、多くの困難があることを考慮しておく必要がある。
- 物価に対する「実感」が指数から乖離することも、ある意味、当然なのである。もともとこの「実感」ば人それぞれ。ガソリン価格が高騰すればば、自家用車をもつ家庭には直接的な打撃になるが、自転車にしか乗らないものには、たいして響かないわけである。
- 指数というかたちで数字で示されると、だれにも共通な客観性をもつかのように錯覚してしまう。多面的で複雑な教育効果に対する成績評価なども、実はこの種の指数化の問題を含んでいる。数字の一人歩き、数値フェティシズムには十分注意しよう。